インターネットの―部分に、常につながっている状態ではないものがあります。
どこまでがインターネットかインターネットの空間この観点から、ひとことでインターネットといわれている世界にもいろいろなレベルがあって、どこまでがインターネットかということを考えていくことが必要かもしれません。
インターネットとは本来、「ネットワークのネットワーク」ということを意味する言葉ですから、つながっているコンピュータは何もかもがインターネットの―部なのだというのが、もっとも広い定義になります。
もう少し絞り込んで、インターネット・プロトコルを使っているネットワークだという定義もありえます。
これだと、直接つながっていなくても同じプロトコルを使っていればインターネットになります。
そしていちばん狭義では、インターネット・プロトコルで「いつも」つながっているような範囲、すなわち事故や故障は別として、常時、専用線で接続されている範囲、これをインターネットだとする定義があります。
どれが正しいということではありませんが、それぞれの意味の違いは考えておく必要があります。
たとえばいま日本で流行っているダイアルアップ接続によるインターネットは、いちばん狭い意味のインターネットには入らないということができます。
英語ではこれらの定義を区別するのに、おもしろいやり方をしています。
常時つながっていてインターネット・プロトコルが使われている、いちばん狭義の意味でのインターネットは大文字で始まる「Internet」。
それより広義なインターネットは小文字で始まる「interlnet」。
これはかなり一般的に使われていることです。
私はこの言葉を翻訳するときに、どうすればよいかたいへんに困りました。
ダイアルアップ接続をどう考えるか話をダイアルアップ接続によるインターネットに戻しましょう。
これはどういう仕組みかというと、いちばん狭義な大文字のインターネットに属しているどこかのコンピュータに、自分のコンピュータから電話をかけて、必要なときだけ自分のコンピュータをつなぐというつなぎ方です。
もちろんつながっているときは、インターネット・プロトコルはそのコンピュータまで行くけれども、つながっていないことが多い。
それは家庭のパソコンなどは電源が切られたりすることも多いし、それよりなにより日本の家庭では、電話回線は普通の音声回線と兼用されていることが多いからです。
このダイアルアップ接続は、インターネットの多くの概念を変えている変則的な形態だと言わざるをえないと思います。
大文字のインターネットに正確に登録されている(DNSに登録されている)コンピュータのインターネットの空間数は、九五年一―月現在で約八〇〇万台です。
序章で述べた「―〇〇〇万台以上」というのは、登録されていないコンピュータやダイアルアップ接続を含んだ、おおよその数なのです。
たとえば、ダイアルアップ接続によるユーザーは、双方向のコミュニケーションができるかというと、たしかにつながっているときは双方向だけれども、つながっていないときはそうではない。
どこかから送られてきたデータは、いったんインターネットに属しているコンピュータに蓄えられて、そこにユーザーが電話をかけてつないだときに、まとめて流れてくるという仕組みです。
ダイアルアップをする側の一方的な都合だけによって、コミュニケーション・パスが設定されたり切られたりするという点で、大文字のインターネットとは違った位置づけにあるということになります。
ダイアルアップによる接続をどう考えるかは、重要な問題ですが、やはり私は、これはインターネットの非常に特殊なケースだと考えたいのです。
それは、もっぱら専用回線の使用料がネックになって、仕方がない選択になっているものだと思うからです。
もし、いまの電話回線料金と同じ料金で専用線が使えるようになったら、ダイアルアップのネットワークはほとんど使われなくなるでしょう。
いま、ダイアルアップ接続が成立しているのは、家庭などで使える物理的な方法が電話回線しかないという前提のもとのことです。
したがって、基盤となる回線の仕組みや料金が変われば、ダイアルアップでつながっているインターネットの部分は、大文字のインターネットに吸収されるだろうということが予想されます。
インターネットが広がっていく方向はさて、いちばん広義のインターネットも大きな意味があります。
つまり、とにかくつながるものはなんでもインターネットなのだ、という見方から新しい方向が開けてくる。
たとえば電子メールをファックスに送る--実際可能です―ということを考えたときには、ファックスというネットワークとコンピュータのネットワークとが相互に乗り入れて、さらにインターネットの空間が広がるとも言えるわけです。
また、電子メールをポケット・ベルに送ることも可能です。
そのような意味で、いちばん広義のインターネットは、インターネットの今後の発展にとっては重要な意味をもっていると思います。
インターネット・プロトコルを使っていないさインターネットの空間さまざまな通信ネットワークがインターネットと情報交換をする、相互運用を可能にしていくということは、今後の社会のインフラストラクチャーを考えていく上でたいへん重要な方向性だと思います。
もちろんインターネットは万能ではありません。
たとえば、実時間性が厳密に求められる通信には、本質的に向いてないところがあるかもしれず、そうだとすると、この実時間通信網は別の形でつくって、お互いに補完し合うという可能性もあるのです。
つまり、インターネットの空間を、インターネット・プロトコルの上で広げていく方向もありますが、その外で連携をしていくこともたいへん重要な方向性ではないかと思います。
メディアとしての可能性―コミュニケーションのアーキテクチャー人間のコミュニケーションを考えるコンピュータ・ネットワークで人間のコミュニケーションを実現しようというときには、そもそもの人間のコミュニケーションについて理解することが不可欠です。
しかし言うまでもなく人間のコミュニケーションは多様で複雑ですから、それをどのように抽象化して、構造(アーキテクチャー)を把握するかが、重要なポイントになります。
そして、こうして得られた理解に基づいて、コンピュータ‥ネットワークが形づくられていくわけです。
コミュニケーションは、そのための仕組みに注目したり、約束事に注目したり、役割分担に注目したりすることで、いろいろに分解することができます。
ここで「話す」というコミュニケーションについて考えてみましょう。
まず話者が頭で何かを考える。
そしてそれを意味のある言葉に置き換える。
次に言葉を音メディアとしての可能性にして発音する。
ここまでが、話者の内部での作業です。
発音されるということはどういうことかといえば、声帯が、空気を震わせるということです。
そして、あいだに入った空気が震えを伝播して、相手の鼓膜を震わせることになります。
ここから今度は聞き手の側の作業になります。
すなわち、鼓膜の震えを聴覚神経が脳に伝え、脳はそれを音声として認識し、さらに言葉として把握し、意味を理解する―ざっと、このような過程をへて、コミュニケーションが成立するのです。このように考えることから、少なくとも二つのポイントをつかむことができます。

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